SUMMER GUT CARE

夏、胃が動かない。

食欲が出ない・みぞおちがシクシク痛む人へ。
効くものを、根拠の強い順に並べました。

4つ「夏バテの胃」は原因で4種類に分かれる
2週間市販薬で改善しなければ受診するのが目安
推奨度 強六君子湯はFD診療ガイドライン2021でエビデンスA

先に読んでください ― これに当てはまったら受診を

この5つは「夏バテ」で様子を見てはいけないサインです。市販薬より先に医療機関へ。

  • 黒い便(タール便)が出る … 胃や十二指腸からの出血のサインになりえます
  • 体重が減ってきた … 食べていないのに、と思っても減少そのものが受診の理由になります
  • 飲み込みにくい … 食道側の問題を含めて調べる必要があります
  • 背中や右肩に抜ける痛み … 膵臓・胆のうの可能性があり、胃薬では対処できません
  • 胸の圧迫感 … みぞおちの痛みに見えて、心臓の症状のことがあります
+ 発熱・血便・止まらない嘔吐
これは食中毒・感染性胃腸炎の側です。このページのセルフケアの対象外なので、すぐ医療機関へ。

受診先は内科または消化器内科。 「2週間以上続く」「50歳以上ではじめて出た」も、それだけで受診を考える理由になります。

30 SEC CHECK30秒セルフチェック

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4 TYPES「夏バテの胃」は、4つの別物が混ざっている

同じ「食欲がない」でも、原因が違えば効くものが違います。見分けの軸はひとつ ―「発熱・下痢・嘔吐・血便があるか」。あれば④、なければ①〜③で考えます。

① FD

機能性ディスペプシア

食後の張り・すぐ満腹になる・みぞおちのシクシク/灼熱感。検査をしても異常が見つからないタイプ。

→ 六君子湯/酸を抑える薬/食事・生活
② 脱水

脱水・電解質不足

だるい・食欲が出ない・立ちくらみ。汗をかいた日ほど強く出ます。食欲不振そのものが脱水のサインのこともあります。

→ 経口補水液を少量ずつ何回にも分けて
③ 自律神経

冷房と外気の温度差

胃もたれ・便通の乱れ・冷え。出入りの多い日に悪化します。

→ 室温26〜28℃/直風を避ける/入浴・軽い運動
④ 感染

食中毒・感染性胃腸炎

発熱・下痢・嘔吐・血便。カンピロバクターのように潜伏期が2〜10日と長く、原因が思い当たらないこともあります。

→ セルフケアの対象外。受診してください

MECHANISMなぜ、夏になると胃が止まるのか

暑さが胃に届くまでには3本の道があります。どれも「胃そのものが弱った」わけではありません。

① 暑さ → 汗 → 脱水1体の水分が減る2消化管に回る血液が減る3胃の動きが落ちて、内容物が残る
② 冷たい物 → 胃の停滞1胃は体温近くまで温めてから腸へ送る2冷たいほど送り出しに時間がかかる3「張っている」感じが続く
③ 温度差 → 自律神経1外は35℃・室内は24℃ を何度も往復する2切り替えが追いつかない3胃腸の動きと便通が乱れる
図①:暑さが胃に届く3つの経路(本文の内容を図にしたものです)

だから「冷たい物は絶対だめ」ではありません。問題なのは量とタイミングです。食後30分以降に、少量ずつ。一気に大量に流し込まないだけで、胃の負担はかなり変わります。

WHAT WORKS効くものを、根拠の強い順に並べる

「効くまでの速さ」「根拠の強さ」「続けやすさ」「費用」で並べました。★が多いほど強い、という意味です。

できること効くまで根拠の強さ続けやすさ費用の目安
経口補水液を少量ずつ数時間★★★★★★1本 約200円
六君子湯(りっくんしとう)2〜4週間★★★★★★保険適用
五苓散/清暑益気湯/補中益気湯数日〜2週間★★☆★★★保険適用
市販の胃薬(症状に合わせて)その日★★☆★★☆1,000円前後
食事を少量・複数回に分ける3〜7日★★☆★★☆0円
室温26〜28℃・直風を避ける数日★★☆★★★0円
食後1時間あけて軽く歩く2〜4週間★☆☆★★★0円
受診して内視鏡で原因を確かめる1日★★★★★☆3割負担 5,000円前後

※ 効果には個人差があります。「治る」ことを保証するものではありません。費用は目安です。

KAMPO漢方は「いつ飲むか」で薬が変わる

夏によく使われる3剤は、効きどころの時期がずれています。いずれも保険適用で、ここが市販薬との一番の違いです。

夏の漢方3剤(時期の順)1崩れはじめ|五苓散(ごれいさん)水分バランスの乱れ・むくみ/気圧・二日酔いの頭痛2真っ最中|清暑益気湯(せいしょえっきとう)汗をかきすぎて消耗・口渇/食欲不振・だるさ3落ち着いた後|補中益気湯(ほちゅうえっきとう)疲れが残る・夏やせ/体力が戻らない
図②:夏の3剤は「時期」で使い分けます

六君子湯(りっくんしとう)― 胃そのものが弱っているとき

食後の張り・もたれ・すぐ満腹になる、というタイプの中心になる漢方です。 機能性ディスペプシア(FD)診療ガイドライン2021では推奨度:強/エビデンスレベル:Aとされ、 食欲ホルモンであるグレリンを増やす働きが報告されています。

※ 漢方も薬です。体質や併用している薬によって合わないことがあります。医師・薬剤師にご相談ください。

MEALS食べていい物・気をつける物

抜くのではなく、消化しやすい形で「主食+主菜+副菜」を揃えるのが基本です。

◯ 食べていい物

消化しやすい主食

おかゆ・やわらかいうどん・雑炊

たんぱく質

豆腐・卵・白身魚・鶏むね肉・しらす・納豆

果物と乳製品

バナナ・すりおろしりんご・ヨーグルト

食べ方

一度に多く食べず、少量を数回に分ける

△ 気をつける物

冷たい飲み物

禁止ではなく量とタイミング。食後30分以降に少量ずつ

脂っこい物・香辛料

胃に留まる時間が長く、痛みが出やすくなります

一気飲み

経口補水液も5〜10分ごとに50〜100mLずつ

食事を抜くこと

たんぱく質不足は回復を遅らせます。量を減らして回数を増やす

水分の適温は5〜15℃。冷たすぎると腸での吸収が落ちるので、氷入りをあおるより「冷蔵庫から出したて」くらいが目安になります。

ONE DAY1日のすごし方

薬より先に効くことがあります。全部やらなくていいので、続くものを1つ選んでください。

1日のすごし方1朝|起きたらコップ1杯寝ている間に失った水分を先に戻す。冷たすぎない物で。2昼|食後は1時間あける消化に血液が必要。動くのはそのあとに。3午後|室温26〜28℃・直風を避ける1時間に1回は立って歩く・屈伸する。4夕|10〜20分の散歩きつい運動でなく「気持ちよく続く」強度で。5夜|湯船につかる冷房で冷えた体を戻す。つけたままの就寝は避ける。
図③:1日のすごし方(できるものを1つだけでも構いません)

※ 運動とFDの関連は観察研究の段階です(因果関係は今後の検証待ち)。効かなければ無理に続けないでください。

OTC & 2 WEEKS市販薬の選び分けと、2週間ルール

症状に合わない薬を飲んでも効きません。そして、期限を決めずに飲み続けないことが大切です。

こんな症状のとき選ぶ種類ひとこと
食べすぎ・もたれ消化酵素薬消化を助けるタイプ
胸やけ・酸が上がるH2ブロッカー胃酸の分泌を抑えるタイプ
空腹時の急な痛み制酸薬出ている酸を中和するタイプ
慢性的に胃が弱い感じ健胃薬胃の働きを助けるタイプ

どれを選ぶか迷ったら、症状をそのまま薬剤師に伝えて選んでもらうのが確実です。

2週間ルール日数どうするか0〜14日市販薬で様子を見てよ…14日を超えたら受診に切り替えますやめるとすぐ戻る日数にかかわらず、受…
図④:市販薬は2週間で区切りをつける

受診でしか選べない薬もあります。たとえばアコチアミドは、内視鏡で確かめてから使う消化管運動の改善薬で、市販では買えません。「胃薬で粘る」より「一度調べて安心する」ほうが、結果的に早いことがあります。

INFECTION夏の食中毒との見分け

セルフケアをしてはいけない側です。発熱・下痢・嘔吐・血便があれば、夏バテの枠から外して考えます。

主な原因

カンピロバクター(鶏肉・レバー)/腸管出血性大腸菌O157(生肉・生レバー)/腸炎ビブリオ(生魚介)/アニサキス(青魚)/ウェルシュ菌

気づきにくい理由

カンピロバクターは潜伏期が2〜10日(平均3日程度)と長く、「何を食べたか」が思い当たらないことがあります。まれに1〜3週間後にギラン・バレー症候群を起こすことも報告されています。

FOR FAMILYご家族へ ― 高齢者の「かくれ脱水」

高齢の方は暑さと喉の渇きを感じにくく、脱水が静かに進みます。 「食べられなかった」は、たいてい「水も摂っていない」とセットです。 食欲の低下はそのままエネルギーとたんぱく質の不足=低栄養につながります。 自力で体温調節が難しい方は、ご家族が室温と湿度を管理してあげてください。

Q & Aよくある質問

冷たい物は飲んではいけませんか?

いいえ。禁止ではなく「量とタイミング」の話です。胃は冷たい飲み物を体温近くまで温めてから腸へ送るため、冷たいほど送り出しに時間がかかります。食後30分以降に、少量ずつ。これだけで負担は変わります。

食欲がないときは、食事を抜いてもいいですか?

抜くより、量を減らして回数を増やすほうが回復は早くなります。たんぱく質が不足すると戻りが遅くなるので、豆腐・卵・白身魚などを少量でも入れてください。

漢方はどこでもらえますか?

ここで挙げた4剤はいずれも保険適用です。内科・消化器内科で相談できます。市販の漢方もありますが、同じ名前でも量が違うことがあるため、薬剤師に確認してください。

2週間より前に受診してもいいですか?

もちろんです。とくに赤信号(黒い便・体重減少・飲み込みにくさ・背中や右肩の痛み・胸の圧迫感)がある場合は、2週間を待たずにその日のうちに受診してください。

主な出典
  • 機能性ディスペプシア(FD)診療ガイドライン2021(日本消化器病学会)
  • 六君子湯とグレリンに関する研究/DREAM Study に関する公開資料
  • 五苓散・清暑益気湯・補中益気湯の使い分けに関する各医療機関の解説
  • 経口補水液の飲み方・飲料の適温に関する各医療機関の解説
  • 市販薬の選び方と「2週間で改善しなければ受診」に関する製薬会社・薬剤師の解説
  • カンピロバクター等の食中毒に関する自治体・食品安全委員会の資料
  • 高齢者の脱水・低栄養に関する各医療機関の解説
※ このページは一般向けの情報整理です(医師の監修は受けていません)。診断・治療の代わりにはなりません。
※ 効果には個人差があります。特定の商品や治療法の効果を保証するものではありません。
※ 症状が続く場合、または不安がある場合は必ず医療機関を受診してください。

もう一度 ― この5つがあれば、すぐ受診を